この記事では、令和6年5月17日にこども家庭庁から出された

「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に伴う個別支援計画作成にあたっての留意点及び記載例について」を解説いたします。

個別支援計画全般の注意点

見直し時期について

令和6年度の報酬改定にて、個別支援計画には、「5領域との関連性の明確化や、インクルージョンの観点を盛り込む必要があります。

ただし、経過期間が設けられており2024年4月末までに個別支援計画が作成されている児童については、次回更新時(遅くても2024年10月末)までは、今ある個別支援計画でも大丈夫です。
※計画時間や延長支援時間の計画は4月より、別表等を用いて定めておく必要があります。

延長支援加算についてはこちら
【令和6年度報酬改定】延長支援加算を算定するには?状況別の注意点も解説

留意事項

  • こどもの意思尊重と最善の利益の考慮をもとに作成すること
  • 記載項目は子どもと家族の意向とアセスメントを基に作成し、総合的な支援方針を設定する。それを受けた長期目標、短期目標、それらを達成するための支援目標及び支援内容を考慮すること
  • 5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)の視点を含むアセスメントを行い、総合的・包括的な支援を提供すること
    ※単に5領域に対応する課題や支援への当てはめを行うだけのアセスメント・計画作成にならないよう留意すること
  • 発達支援は個別のニーズや状況に応じてオーダーメイドの支援を行うものであり、複数の児童の支援目標や支援内容が同じである等はないようにすること。
  • 支援目標には「本人支援」 「家族支援」 「移行支援」を必ず記載すること。地域支援・連携は必須ではないが、積極的に取り組むことが望ましい。
  • PDCAサイクルに基づいて支援を提供し、計画の見直しや評価を定期的に行うこと。
    ※支援目標や内容が長期的に同一であることがないように留意すること。

各項目の記入内容

次の参考様式を用いて解説します。

自社で独自の様式を使用している場合でも、必要な内容が盛り込まれるように注意してください。

利用児及び家族の生活に対する意向

この欄には、面談等で、こども本人や家族の意向を聴いた上で、家族より得た情報やこどもの発達段階や特性等を踏まえて、整理して記載しましょう。

記入例

総合的な支援の方針

期間は1年間が目安ですが、それ以上の期間も可能です。

以下の観点を踏まえて、事業所としてどのように支援をしていくのかという方針を記載しましょう。


・障害児支援利用計画、障害児支援担当者会議(セルフプランの場合には、事業所間連携加算等も活用し、複数の利用事業所を集めた支援の連携のための会議)で求められている事業所の役割

・支援場面のみではなく、家庭や保育所や学校等での生活や育ちの視点

・保育所等の併行利用や移行、同年代のこどもとの仲間づくり等のインクルージョン(地域社会への参加・包摂)の視点

・事業所を継続的に利用している場合には、個別支援計画のモニタリング結果を踏まえた PDCA サイクルによる支援の適切な提供の視点

記入例

長期目標・短期目標

長期目標

総合的な支援の方針で掲げた内容を踏まえ、概ね1年程度で目指す目標を設定して記載しましょう。

短期目標

長期目標で掲げた内容を踏まえ、概ね6か月程度で目指す目標を設定して記載しましょう。

記入例

支援の標準的な提供時間等(曜日・頻度、時間)

利用曜日・提供時間等を記載しましょう。


計画及び延長時間を別表で定める形でも大丈夫です。

記入例

支援目標及び具体的な支援内容等

項目

この欄には、「本人支援」 「家族支援」 「移行支援」 「地域支援・地域連携」を記載しましょう。

「本人支援」 「家族支援」 「移行支援」については必ず記載してください。

「地域支援・地域連携」については、必要に応じて記載で構いません。

本人支援の項目に記載する内容

・アセスメントやモニタリングに基づき本人への発達支援について、5領域との関連性を含めて記載しましょう

・5領域との関連性について、5つの領域全てが関連付けられるよう記載しましょう。
ただし、相互に関連、重なる部分もあるため、5つの欄を設けて、5領域1つ1つに異なる目標を設定する必要はありません。

家族支援の項目に記載する内容例

  • 発達状況や特性の理解に向けた相談援助、講座やペアレントトレーニングの実施
  • 家族の子育てに関する困りごとに対する相談援助
  • レスパイトや就労等の預かりニーズに対応するための支援
  • 保護者同士の交流の機会の提供(ピアの取組)
  • きょうだいへの相談援助等の支援
  • 子育てや障害等に関する情報提供 等

移行支援の項目に記載する内容

  • インクルージョン(地域社会への参加・包摂)を推進するために、保育所等との併行利用や移行に向けた支援、同年代のこどもとの仲間づくり等の「移行支援」の視点を取り入れましょう。
  • 移行支援は、保育所等への移行だけでなく、将来的なライフステージの切り替えに向けた準備や、地域での生活を含む地域社会への参加・包摂に係る支援も含まれます。
  • 移行支援の例
    • 移行先との調整や支援内容の共有、移行先の受入体制の協力や相談援助の支援
    • 本人への発達支援や進路・移行先の選択に関する相談援助や準備の支援
    • 併行利用先や学校との情報共有や連携・支援の取組
    • 地域の保育所や子育て支援サークル、地域住民との交流など

※移行支援と本人支援や家族支援が重複する場合は、「項目」の欄には「本人支援」 「家族支援」 と 「移行支援」を併記してもかまいません。

地域支援・地域連携の項目に記載する内容

  • こどもと家族を中心に、保健・医療・福祉・教育・労働などの関係機関や障害福祉サービス事業所と連携した取り組みを記載しましょう
  • 計画の対象である、こども・家族への支援に係る取り組みを記載することに注意しましょう

【地域支援・地域連携の例】

  • 保育所や学校との情報連携や調整、支援方法や環境調整に関する相談援助などの取り組み
  • 保健師や医療機関との情報連携や調整などの取り組み
  • 発達障害者支援センターや医療的ケア児支援センター、地域生活支援拠点などとの連携の取り組み
  • 相談支援事業所や障害福祉サービス事業所、他の障害児通所支援事業所との生活支援や発達支援における連携の取り組み

※ 移行支援の取り組みとして記載されている場合は、再度明記する必要はありません。

支援目標(具体的な到達目標)

支援期間終了の際(モニタリング時)に、到達できていると見込まれる「こども本人や家族の状況」を具体的な到達目標として記載しましょう。

※こども本人や家族の意向等だけでなく、アセスメントの結果も踏まえて、必要と考えられる支援ニーズも含めて目標設定を行いましょう。

到達目標については、主語はこども本人や家族となるよう記載しましょう。

※ただし、「移行支援」及び「地域支援・地域連携」については、主語が事業所・関係機関・関係者等にもなることがあっても構いません。

支援内容

支援目標(具体的な到達目標)で設定した目標に向けて、事業所がどのような支援、工夫、配慮を行うのかを具体的に記載しましょう。


「本人支援」については、具体的に設定した支援内容と5領域との関連性を記載しましょう。
※支援内容と関連する5領域が複数にまたがる場合には、関連する領域を全て記載してください。


「家族支援」 「移行支援」 「地域支援・地域連携」については、家族や関係機関への具体的な働きかけや取組等について記載しましょう。
※これらの項目については5領域との関連性の記載は不要です。

記入例

その他の項目

達成時期

支援目標を達成するために必要となる期間を設定しましょう。

個別支援計画については、6 か月に 1 回以上の見直しが求められているため、達成時期についても最長6か月後までとしましょう。

また、1~3か月で達成する目標も積極的に検討していくことが推奨されています。

担当者・提供機関

基本的には、支援を提供する担当者の氏名や職種等を記載しましょう。

※担当職員の異動、変更等が見込まれる場合には氏名ではなく、職種で書いておくことをオススメします。

「移行支援」や「地域支援・地域連携」において、関係機関との連携を行うことを支援内容として設定している場合には、具体的な連携先である機関名等を記載しましょう。

留意事項

支援内容に設定した取組が、加算の算定を想定している場合には、算定する加算や頻度等について記載しましょう。
(例:子育てサポート加算、家族支援加算関係機関連携加算等


個別支援計画とは別途計画を作成することが必要な加算についても、個別支援計画との関連性を記載しましょう。
(例:専門的支援実施加算、自立サポート加算等)。

家族の役割、支援の進め方等、支援について補足事項があれば記載しましょう。

優先順位

本人や家族の意向も踏まえた上で、ニーズと課題等を踏まえて、優先順位を設定しましょう。
※こどもや家族と、共に考えながら設定することが望ましいとされています。

優先順位として番号を振ることのほか、二重丸や丸等で優先度を示すなどでも構いません。

また、優先度がつけられない又は判断できない場合には空欄にすることや、同一の番号でも可能です。

「家族支援」 「移行支援」 「地域支援・地域連携」については、優先順位の記載は不要です。

記入例

個別支援計画作成についての相談について

各種加算等について、お問い合わせフォームより多数のご相談をお送りいただいておりますが、

個別支援計画含めて、具体的な相談は有料相談(訪問・電話・オンライン)となります。
※有料になる場合は予めお伝えいたします。また、顧問先は無料です。

個別相談のご希望がございましたらお問い合わせください。

尚、各記事の内容(根拠・解釈)や、一般的なお話(加算の算定要件等※個別案件は除く)であれば都度対応しておりますので、気になることがございましたらご連絡ください。

まとめ

報酬改定により個別支援計画の記入例が出たのは良いですが、従来より詳細な計画を求められておりますので、負担が増えることが想定されます。

利用児童が少ないなどで余裕があればまだ対応できますが、数十人といった児童の計画を立てている児発管からすると、かなり厳しいと思われます。

いきなり完璧な計画を目指すと児発管の精神的負担が増えて、離職や放棄などにより、かえって支援の質を落とすことになりかねません。

ですので、個別支援計画の趣旨(必要性や役割なども)を考えて、適切なアセスメントと、ニーズ・状況に応じた目標設定、将来を見据えた移行支援、関係機関との連携を中心に検討し作成していれば、今回の留意点や記載例を忠実に守ることができなくても仕方ないと考えるのも良いかと思います。
※あくまで重要なポイントは抑えた上でのお話です。

延長支援加算についてはこちら
【令和6年度報酬改定】延長支援加算を算定するには?状況別の注意点も解説

加算の算定により記録や事務作業等が増えてくるかと思いますが、当センターでは無駄を極力減らし、適正かつ効率的な運営の支援が可能です。

事務処理や報酬改定の対応に追われている事業所様や、各種加算の算定を検討されている場合は一度当センターまでご相談ください。
加算届の作成方法や必要書類、要件のご相談なども、お電話もしくはお問い合わせフォームよりご連絡ください。

参照資料 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について|こども家庭庁